宮 澤 賢 治

『「旅人のはなし」から』  <宮沢賢治全集 8>ちくま文庫  追記

 「弟清六氏によれば、賢治の父政次郎はときどき、「けんじには前世に永い間、諸国をたった一人で巡礼して歩いた宿習があって、
 小さいときから大人になるまでどうしてもその癖がとれなかったものだ」としみじみ語ったという(「兄賢治の生涯」)。
 「国語綴方帳」は別として、おそらく作者青春期のもっとも早い時期に書かれたこの散文には、右のような「旅人」の喩によって、
 あたかも自分の前世から後世までに対応するごとき観照が提出されている。 このように人生や世界や自己の織りなす時空を、若干
 の稚拙さは残しながら早くも徹底した喩で表現している点は注目に値しよう。このかえりなき旅人は、「ガドルフの百合」に出てくる、
 ≪ 旅のガドルフ ≫の前進である。 また、この一篇には一種の聖者伝の趣があるように思われる。」           
                                            同本解説より〜天沢退二郎(詩人)


 私はこういう瞬間の胸の興奮が、何より好きで仕方ない。誰もが読む、誰もが知っているちくま文庫の、ごく標準的な宮沢賢治全集を手にとって、
それでも何か、自分なりの作品選びができないものかと朗読を試みる訳であるが、
今回は、この文章の清廉さとは別に、何より、この解説を書いているのが、天沢退二郎氏であったことは私を高揚させた。
もちろん、天沢氏は著名な詩人であるので、知っている方も多いかもしれないけれど、私の知っている天沢退二郎という名前は、
ある少年少女向けに書かれた「光車よ、まわれ!」という物語の作者なのである。
この「光車よ、まわれ!」を取り巻く一連の話し、
これはある出版社が遠い昔試みた(夢のような!)少年少女向けの全集にまつわる話しなのであるが、ここでは書ききれないので、
いつか改めて「気まぐれdiary」にでも書き留めておきたいと思う。
それにしても、「本」は素敵である。 ページをめくる行為は、子どもの頃、胸をときめかせた宝探しに似ている。

ここのリンクで紹介している「エルバーフェルト日記」というブログで、とても興味深い記事をみつけたので、
 短い記事ですがその一部を抜粋し掲載します。 
 (記事本文はこちら→
(http://elberfeld1979.spaces.live.com/blog/cns!5E78FCC616910539!280.entry
<著者は次に、賢治が学んでいたのはフランス語ではなくドイツ語であったこと、賢治の詩に登場する外国語の頻度数も英語、ドイツ語の順でフランス語は低いことに注意を促す。従来の賢治研究の盲点である。疑いなく賢治の詩を浸しているのはフランス語ではなくドイツ語の雰囲気なのだ。賢治は、デア、デス、デム、デンというドイツ語定冠詞の格変化さえも詩語として用いた詩人なのである。著者はさらに、賢治と同時代のドイツの詩人、アルノー・ホルツが賢治に与えた影響に言及してゆく。ホルツは当時、刻々と変化してゆく状況を即物的に捉えてゆくその文学的手法「秒刻体」によって有名だったが、それこそ賢治の「心象スケッチ」へと展開していったものにほかならないというのである。>
                   (三浦雅士氏書評 『梅津時比古著「《ゴーシュ》という名前」』 毎日新聞2006年1月29日より)

たしかに宮澤賢治のことばには、しっかりとしたおもみと透明な厳しさがあって、そのことが柔弱さをしりぞけ、詩世界のゆたかさをぐんと拡げている。彼のことばの、鉱物のような質感に、「ドイツ語の雰囲気」が感じられるようです。
                                    <ブログ記事「宮澤賢治にとってのドイツ」より>


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